変わりゆく価値観

Created
Aug 30, 2022 7:36 AM
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変わりゆく価値観

長く続いた「都会生活」から離れ、人口3,000人ちょっとの小さな町に居を移してから一年が経ちました。引っ越した当初の数カ月は、だいたい月イチで都会に繰り出して仕事のあれこれをやる生活をしていたものの、秋の終わりから春先にかけてはしばらく町にこもる生活が続いていました。そして暖かくなってからのこの数ヶ月は、再び仕事の関係で都内や地方各地に出張する日が続いています。

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都会を離れることに対する懸念、その後の生活における不自由さなど、「どうなの?」という声は今でも多く聞かれます。それまでは徒歩圏内にスタバが5軒もあって、お腹が空いたら数分で食事にありつける都会での生活はたしかに便利なものでした。ひっきりなしにくる電車も、煌々と輝く町の灯も、華やかなだけではなく安心や安全を守るという意味でもとても価値のあるものだったと思います。

では実際の田舎暮らしはどうか。最寄りのスタバは車で一時間半ちょっとかかります。公共の交通機関はいわゆる列車。最寄りの駅までも車で20分かかり、本数も一時間に一本あるかどうか。都会では想像もしていなかったくらいの交通インフラの違いです。そして日が暮れるとあたりは真っ暗。

都会の町並みを歩いている時は、ご飯を食べるにも、コーヒーを飲むにも、そしてなにかの買い物をするにも、一生かけても選びきれないくらいの選択肢がありました。どちらかというと選ぶという行為に費やす時間と労力のほうが多かったように感じます。小さな町にいるとこれが圧倒的に減ります。町の中で食事ができる場所も数軒。ここでは、選ぶ行為よりも、限られた選択肢の中でいかにそれを楽しむか、というほうに意識が向くようになります。

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ここでの生活が始まってからは、家族や仲間とキャンプをしたり、スキーやスノボに繰り出したり、最近は川でフライフィッシングをやるようになり、仕事に遊びにてんこもりの日々が続いています。子どもたちも、野山を駆け回り自然と触れ合う時間が生活の一部となり、普段の時間の過ごし方と、日々の選択肢との向き合い方が明らかに変わってきました。

これからの何年かのうちに、子どもたちはいろいろな生活の変化を体験します。学校での生活もそうだし、社会との関わり、人との関わりも。そして彼らがいつかこの町を離れても、沢山の選択肢にぶつかることでしょう。でも今の生活の中での、「少ない選択肢の中から選んだことをとことん楽しむ」そんな体験を大切にしていければ、きっと彼らの未来はたくさんの楽しみが増えていくんだと信じています。