ぼくが nbyn.jp ではじめたいこと
道北を歩いていると、しょっちゅう立ち止まる。足もとのちいさな花とか、木の幹にぺたっとついた地衣類とか、ぱっと飛んでいった鳥とか。名前は、ほとんど知らない。それでも「これ、なんだろう」と気になって、スマホを取り出してぱしゃっと撮る。
ぼくが nbyn.jp ではじめたいのは、その「なんだろう」をみんなで持ち寄る場所をつくることだ。むずかしい知識はいらない。歩いて、見つけて、撮る。それだけのことから、道北の自然のいまが、すこしずつ見えてくるんじゃないかと思っている。
「これ、なんていう生きものだろう」からはじめる
nbyn.jp のまんなかには、「教えて」というボードがある。名前がわからない生きものの写真を、わからないまま、まるっと公開で投げられる場所だ。
ぼくは虫もきのこも全然くわしくない。だから最初は「こんなの聞いていいのかな」とちょっとためらった。でも投げてみると、だれかが「それ、たぶんエゾアジサイだよ」とか「それはヒグマの食痕かも」とか返してくれる。そのたびに、ふわっと世界の解像度が上がる。知らなかったものに名前がつくと、次に歩くときの目つきが変わる。
わからないことを、わからないまま外に出していい。むしろそれがいちばんおもしろいところだと思っている。
写真いちまいが、自然のきろくになる
投稿でやっていることは、すごくシンプルだ。いつ、どこで、なにを見たか。たったそれだけ。
でも、このちいさな点が集まっていくと、だんだん線になる。「ここ何年か、この沢でこの花をよく見るようになったね」とか「あの森でこの鳥を見かけなくなったね」とか。一枚いちまいはなんでもない記録でも、たまっていくと、道北の自然が時間のなかでどう動いているのかが、うっすら浮かんでくる。
ぼくひとりだと、見られる場所も時間もかぎられている。でも、おなじ景色を別の人がべつの日に歩いて、べつのものを撮ってくれたら。その重なりが、ひとりではぜったいに描けない地図になっていく。
ひとりじゃわからないを、みんなで持ち寄る
自然を守りたい、という気持ちはぼくにもある。でもその前に、まず知ることだと思っている。なにがいて、どこにいて、どう変わってきたのか。それがわからないと、守るもなにもない。
そして知るのは、ひとりよりみんなのほうが、ずっとはやくて、たのしい。くわしい人がいて、たまたまおなじ山を歩いた人がいて、子どもが見つけた虫を一緒にのぞきこむ人がいる。nbyn.jp は、そういう持ち寄りの場所にしたい。記録が増えること自体が、道北の自然へのまなざしが増えていくことだと思うから。
northbynorth.jp で、もっと知りたくなる
歩いて記録するだけだと、見えるのは目の前のことだけだ。そこからもう一歩ふみこみたくなったら、北 by ノース、northbynorth.jp を読んでほしい。道北の自然を、いろんな角度から掘り下げているマガジンだ。何本か、ぼくのお気に入りを挙げておく。
- カメラトラップと AI で道北の野生動物を観察する。森のなかに置いたカメラと AI が、ヒグマやエゾシカをこっそり記録していく話。人が張りつかなくても自然が見えてくる仕組みに、わくわくする。
- エゾシカと向き合う道北 ・ シカ柵システムの10年。下川町や中川町で、シカと人の距離をどう取ってきたのか。ジビエの話まで地続きでつながっていく。
- 北方圏の生物多様性を「衛星」で読む。足もとの一枚と、宇宙からの一枚。スケールはまるでちがうのに、見ているのはおなじ森だというのがおもしろい。
歩く前にこういう記事を読んでおくと、現地での「なんだろう」が増える。気がする。
dohokuhub.com で、道北ぜんたいの景色に引いてみる
生きもの一匹の話から、もっとぐーっと引いて、道北という土地ぜんたいを眺めたくなったら、dohokuhub.com だ。データで道北の現在地を読みとくサイトで、自然のことも長い時間軸で扱っている。
- 道内野生動物の長期データ。エゾシカ73万頭、タンチョウ1927羽。数字でならべると、自分が撮った一枚がこの大きな景色のどこにいるのか、すこし見えてくる。
- エゾシカ・ヒグマ・タンチョウの個体数推移50年。50年というものさしで見ると、いまがどういう時間なのかが立ちあがってくる。
- 道内森林の生物多様性と長期推移。知床や大雪山や阿寒の森をくらべながら、次の50年を考える。ぼくが歩いている森も、この長い物語のなかの一場面なんだと思える。
nbyn.jp で記録して、northbynorth.jp で掘り下げて、dohokuhub.com で引いて眺める。この行ったり来たりが、けっこうたのしい。
まずは、一枚から
上手な写真じゃなくていい。名前を知らなくていい。次に道北を歩くとき、気になったものを一枚だけ、ぱしゃっと撮ってみてほしい。
そこから先になにがはじまるのか、じつはぼくもまだ、ぜんぶは知らない。
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