クリックを主指標にしない
関連記事やレコメンドの並びを「クリックの多い順」にすると、短期の指標はたしかに伸びる。ただ、これを主指標に据えたメディアは、時間をかけて痩せていく。回遊は、クリック数ではなく「深い読了・フォロー・再訪への転換」で設計したほうがいい。理由を順に整理する。
クリック最適化が媒体を痩せさせる理由
並び順の基準をクリックに置くと、クリックされやすい記事だけが上位に集まる。その上位が編集の手本として機能し、次に作られる記事も同じ方向へ寄っていく。結果として、時間をかけて深く読ませたい記事ほど下に沈む。指標としてのクリックは増えているのに、媒体全体の体質は薄くなる。測るために置いた指標が、いつのまにか目的そのものに置き換わり、元の狙いを壊す。いわゆるGoodhartの法則が、そのままメディアの設計で起きる状態だ。
注意したいのは、これはクリックを集める記事そのものを否定する話ではないことだ。天気や災害のような「いま多くの人が知りたい」記事は、広く届く搬送波として、入口の役割をきちんと果たす。避けたいのはクリックそのものではなく、記事の中身がほとんど残らないまま次へ飛んでいく回遊、つまりザッピングのほうにある。
関連記事は増幅でなく変換
この整理に立つと、関連記事に持たせる役割は「増幅」から「変換」へ変わる。一本読み終えた読者の関心を、もう一段深い読了・フォロー・再訪へと、形を変えて渡す装置(コンバーター)として設計する。ここを増幅装置とみなすと、回遊の数字が動いても、実態としては通過されているだけになりやすい。
読了後に差し出す選択肢は、三つの方向でバランスを取ると扱いやすい。発見(隣接テーマへ少し外す)、学び(同一テーマを深掘りする)、安心(見落としを防ぎ、つながりを保つ)。この三つがそろうと、読者は自分のペースで奥へ進める。
実装で効く二つの決めごと
ひとつは、回遊の導線を本文の前に置かないこと。まだ本文を受け取っていない段階で他記事へ誘導しても、読者を引き剥がすだけで、回遊の意味が立たない。導線を渡すのは読み終わった後でいい。
もうひとつは、並び替えの基準を人気やクリック率ではなく、エンゲージメントの質に置くこと。滞在時間やスクロール深度など、実際に読まれた度合いを重みにする。クリック磁石を上位に固定しない。
最終的に追う主指標は、クリックの総量ではなく、クリックがどれだけ深い読了・フォロー・再訪に転換したか、である。クリックは入口の指標であって、目的地の指標ではない。入口を広げる投資と、入口から奥へ通す投資は、分けて設計したほうがいい。
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