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比較させない差別化の表現

事業

サービスやメディアの立ち位置を説明するとき、「〜ではない」「〜のような使い方はしない」「大手にはできない」といった否定形で差別化を語りたくなる。わかりやすいし、書いていて気持ちがいい。ただ、この書き方は二重に損をする。相手のモデルを下げると同時に、自分のブランドも小さくしてしまう。なぜそうなるかを整理する。

否定は、相手の土俵を認めてしまう

「〜ではない」と書いた時点で、その比較軸が存在することを読み手に認めさせている。「ランキングのないSNS」と名乗れば、読み手の頭にはまずランキングのあるSNSが立ち上がり、こちらはその引き算として理解される。差別化しようとして、かえって相手の土俵に乗ってしまう。しかも、その軸で評価される他者を暗に見下すニュアンスが乗り、共感の入り口を狭める。

もう一段進めると、他者の行為を裁く語(見せびらかし、承認欲求、といった言葉)は、否定文でも肯定文でも使わないほうがいい。その語を出した時点で、読み手の一部を裁く側に立たせてしまい、ブランドの器が小さくなる。

肯定形で、自分が見ているものだけを描く

対処は単純で、否定を肯定に、比較を固有の価値に置き換える。

  • 「ランキングはありません」→「自分のペースで選ぶための、静かな道具」
  • 「大手アプリにはできない」→「その土地でしか集まらない一次情報を束ねる」
  • 「みんなが行く場所ではなく」→「まだ知られていない一つとの出会いを大事にする」

コツは、比較の軸ごと消すことにある。「速い・遅い」で語ろうとするのをやめて、その速さは自分の歩き方と関係がない、と自分が見ている景色だけを描く。否定形を肯定形に直すだけでは足りない場面もある。軸そのものを外して、守りたい価値を正面から書く。

効用は、ブランドの器が大きくなること

この書き方は、単に感じがいいという話ではない。有名なもの、メジャーなものを選ぶ人も含めて、誰も下げないことで、読み手の母数を狭めずに済む。差別化は「何と違うか」ではなく「何を大切にするか」で立てたほうが、長い目で見て強い。否定には一瞬の切れ味があるが、肯定は積み上がっていく。

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